トン族大歌は、独唱のあとに合唱が続く形式ではありません。国家級無形文化遺産の記録では、楽器も指揮者も用いない多声部の歌として説明されています。歌い手は互いに重なる旋律を担い、それぞれの声部は他の声に支えられます。曲目には叙事歌、子どもの歌、儀礼の歌、動物の声をまねる歌があります。模倣歌では、聴き取る力と声の制御も歌唱の技となります。歌い手は自分の旋律を保ちながら他の声にも注意を払います。全体の響きは一人の旋律ではなく、声部間の関係から生まれます。ユネスコは2009年に登録し、音楽的・社会的な役割を記しています。
雑誌から
幾重もの声で歌う村
トン族大歌は声部を重ねながら学び合う歌。鼓楼、家、公共の場などで受け継がれます。
同じ街をめぐる · 黔東南ミャオ族トン族自治州 ↗
複数の声部がつくる旋律
歌隊で受け継ぐ伝統
ユネスコの記録によれば、歌師が歌隊に大歌を教えます。国家級の記録は黎平侗族大歌を黎平南部と隣接する従江北部に結び付け、肇興も挙げています。知識は聴き、まね、共に練習することで伝わります。一人の歌い手が完成した作品を渡すのではありません。歌隊は実際の学びの単位であり、各自の声がいつ入り、どこで休み、ほかの旋律とどう出会うかを身につけます。記録には年齢別、場合によっては性別で分かれる歌隊もあります。すべての村人が歌うという意味でも、歌隊の曲目が一様という意味でもありません。
鼓楼も演唱の場の一つ
ユネスコは鼓楼(村に立つ太鼓の塔)、家、公共の場を大歌の演唱場所として挙げています。肇興では鼓楼が、五つの村組、川、花橋、共有広場を含む村の景観の中にあります。こうした空間は正式な合唱に場を与える一方、歌声が記念建築だけに限られないことも示します。鼓楼は歌隊の場になり得ますが、一回ごとの演唱は機会と参加者によって異なります。
歌が運ぶさまざまな知識
国家級の記録は、大歌が歴史の記憶、自然についての知識、社会的な価値を伝えると説明します。だからといって、すべての歌が教訓であったり、演唱がいつも同じであったりするわけではありません。子どもの歌、儀礼の歌、動物の声をまねる歌など曲目は幅広く、意味は歌詞、歌い手、場面によって変わります。共同で歌うことは、音と共に学ぶ方法を結び付けます。一人の声部を続けるには、ほかの歌い手の声を注意深く聴く必要があります。
